公文書偽造罪に気づけるかどうか 平成24年度行政書士試験問2 公文書偽造罪に気づけるかどうか 平成24年度行政書士試験問2

公文書偽造罪に気づけるかどうか 平成24年度行政書士試験問2



 現在連載中 【やる夫による行政書士試験テキスト・問題集レビュー

 2013年8月24日追加「行政書士基礎テキスト 法令編(2013年度版)



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さて、前回、平成24年度行政書士試験問題の問1を色々と考察してみて、私個人としては面白かったので、問2の方も考察してみようかなと思いました。ただ、この問2は、法学のカテゴリと考えられるわりには、法学の知識で解くというよりは、推理力で解くような問題なので、問1ほど色々と考察できる要素はありません。しかし、推理力を働かせるという観点で考えてみると、少し面白い部分もあるので、今回取り上げてみたいと思います。


平成24年度の行政書士試験問2は、次のとおりです。




次に掲げる条文は、いずれも「みなす」の文言が含まれているが、正しい法律の条文においては「みなす」ではなく「推定する」の文言が用いられているものが一つだけある。それはどれか。

1.未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。(民法753条)
2.移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。(民事訴訟法22条3項)
3.文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書とみなす。(民事訴訟法228条2項)
4.自己の財物であっても、他人が占有し、又は公務所の命令により他人が看守するものであるときは、この章の罪*については、他人の財物とみなす。(刑法242条)
5.試験事務に従事する指定試験機関の役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。(行政書士法4条の7第3項〔一部省略〕)




【この問題が問うていること】




この問題をぱっとみたとき、民事訴訟法だの刑法だの、しまいには行政書士法だのといっているので、「ゲェーッ!」とか言いたくなります。通常、行政書士試験問題においては、民事訴訟法や刑法は試験対象範囲になっておりませんので、わざわざそれらの条文を勉強しているという方はいないと思います。行政書士法もたまーに試験問題に出てくることがありますが、とはいえ本腰を入れて行政書士法を勉強しているという方もほとんどいないと思います。



この問題は、本来「推定」という法律用語が使用されている選択肢(条文)はどれかということを問題にしております。したがって、本来の条文とは違う条文が選択肢の中に一つあるということなので、条文の間違い探しをする形になります。おそらく大半の受験生が、「みなす」と「推定」の意味の違いはわかっているであろうと思いますので、この問題が何を問題にしているのかは、大半の受験生がすぐに把握したであろうと思います。



尚、「みなす」は、「擬制」とも呼ぶことがあるのですが、いわば確定事実として取扱い、反証を許さないものを意味します。それに対し、「推定」は、一旦確定事実として取り扱うものの、反証が成功すれば覆ります。「みなす」と「推定」は、後の反証により確定事実が取り消されることがあるかどうかという点において違いがあります。したがって、この問題を考えるとき、どの選択肢の条文が、後の反証により取り消される可能性があるだろうかということを考えることになります。





【結論及び解答の導き方】




この問題、結論から言いますと、正解は3を選択することです。引っ掛けの選択肢は特にないように見受けられますが、受験生がわかる条文をあえて一つ入れようという意図で、選択肢1が存在しているように思います。試験問題をぱっとみたときに、受験生からすると、選択肢1の民法753条ぐらいはなんとなくみたことがあるという感じになるかと思いますので、まずはここに救いを求めることになるでしょう。多くの受験生が、この選択肢1がまずは正しいか誤っているのかを考えてから、他の選択肢を考えるという構図になるであろうと考えられます。


ちなみに、この問題を解くコツは、条文を暗記することではなく、ある種推理力のようなものを働かせることになります。それでは、選択肢1と、正解の選択肢3を通してそのあたりを少し解説します。




選択肢1は、未成年が婚姻により成年とみなされるという、いわゆる成年擬制のことを指しております。この成年擬制という言葉さえ知っていれば、1の条文が間違っていないと考えることができます。上述のとおり、「みなす」は「擬制」という呼び方もあります。したがって、この「みなす」が「擬制」とも呼ばれていることと、成年擬制というワードが結びつけば、この条文は間違っていないという解答が導けます。



さて、続いて正解の選択肢3ですが、これは「~公文書とみなす」ではなく「~公文書と推定する」が正しい条文になりますので、この選択肢3が誤った条文となります。選択肢3が本来「推定」であるということを導き出すためには、「公文書偽造罪」の存在を思い出すことが近道だと考えます。公文書は、「偽造」されて作成される場合もあるのです。そのような「偽造」された公文書を、真正に成立した公文書として取り扱うわけにはいきません。したがって、一度は真正に成立したものとされた公文書であっても、後に「偽造」して作成されたという反証があり、その反証が成功したならば(偽造であることが認められたならば)、以降その文書は公文書とはみなされなくなります。このような事情から、この民事訴訟法228条2項では「推定」という法律用語が用いられているわけです。


ちなみに、民事訴訟法228条4項は、私文書の成立についての推定規定となっており、どちらかというと、この私文書の成立の推定規定の方が有名で、議論もあったりするところではあります。この私文書も、偽造される可能性がありますので、「推定」という法律用語が使われております。






【おわりに】



今回取り上げた平成24年度の行政書士試験問2は、全ての選択肢を細部にわたって検討をしていくと、正直結構時間がとられてしまいます。したがって、成年擬制というワードに気づいて選択肢1をまずは除外した上で、できるだけ早く選択肢3から「公文書が偽造される」可能性に気づけるかどうかが鍵となります。こういった、本来行政書士試験問題の範囲ではない条文が出てくるときは、だいたい推理力を働かせるような問題になったりしますが、ある重要キーワードに気づければ、意外と早く解答できるものです。



この平成24年度行政書士試験問2は、条文の暗記を問題としているわけではないので、この問題をみて、民事訴訟法や刑法の条文暗記に走ってしまうのは時間の無駄ともいえます。条文暗記等しなくても、比較的一般的なワードである「公文書偽造罪」の存在に気づければ、この問題は解けるはずですので、問題の難易度としてはさほど高くないのではと思います。民事訴訟法や刑法といったなじみのない条文を持ち出して一見難しそうにみせて、実は難易度としては普通ぐらいなのではないかと私は思いました。


行政書士試験問題は、法学のカテゴリに属する問題の方がが、くせのある問題が多くて考察する分には面白そうなので、ちょっとこの分野を中心にもう少し考察等してみたいですね。




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生年月日:1980年8月19日

千葉県行政書士会所属の行政書士です。

私自身が独学で行政書士試験に合格した経験に基づき、やる夫というキャラクター等を使って行政書士試験対策等をこのブログでは書いております。

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